第78回 診療圏調査をどう活かすか?数字だけではないクリニック開業物件選び

医院開業を検討する際、多くのドクターの皆さまが一度は目にするのが「診療圏調査レポート」です。これは、想定する立地から一定範囲内の人口や年齢構成、競合医療機関の数などを分析し、潜在患者数を算出する調査になります。(こちらのコラムもご覧ください)
その立地の医療ニーズやポテンシャルを表す有用なツールではありますが、ただ診療圏調査の数字をそのまま鵜呑みにしてしまうべきではありません。
今回は、診療圏調査結果の数字をどのように読み取り、物件選びに活かすと良いのか見ていきましょう。
「人口が多い=良い立地」とは限らない
診療圏調査では、半径500m~2km圏内の人口が表示されることが一般的です。人口が多いほど潜在患者数が多いように見えますが、実際にはそれだけで立地の良し悪しを判断することはできないと思います。
それは人口が多いエリアでも、すでに同じ診療科のクリニックが多数存在している場合、患者さんは分散してしまうからです。クリニックに限らず、こうしたことは競合分布状態では必然的に起こります。また、大きな幹線道路や鉄道などによって生活圏が分断されている場合、数字上は近くても実際には患者さんが来院しにくいケースというのもあります。
こうした要因から、診療圏調査の人口データを見る際には、競合医療機関の数や地域の生活動線と合わせて考えることが必要です。

競合数だけでは見えない医療需要がある
診療圏調査では、競合クリニックの数も重要な指標として示されます。しかしながら、これまた単純に競合数だけで判断するのもまだ早いかもしれません。
例えば同じ内科であっても、『高齢者中心』『生活習慣病管理中心』『発熱外来中心』など、専門性や実際の診療領域が異なる場合があります。
また、開業から長い年月が経っているクリニックでは、新規患者さんの受け入れが限定的になっているところもあるでしょう。こうした場合、数字上は競合が多く見えても、実際には新規開業の余地があることも見えてきます。
あくまでもデータは開業地のポテンシャルを見出す入口に過ぎませんので、できる限り競合クリニックのホームページを見たり現地まで足を運ぶなどできると良いでしょう。
特にその場所で本格的に検討するのであれば、必ず現地確認を行いましょう。
その上では、以下のようなポイントは実際に現地を見なければ現況がわかりません。
・人の流れ
・道路の横断しやすさ
・駐車場の有無
・バス停やスーパーの位置
・調剤薬局との位置関係
データ上は条件が良く見える場所でも、実は人通りが少ないこともあります。逆に、診療圏人口がそれほど多くない場所でも、生活動線上に位置しているため安定した患者数を確保できるケースというのもあるのです。

診療圏調査結果をもとに、比較をする
診療圏調査を活用するうえで有効なのは、「複数物件の比較」です。
候補となる物件が複数ある場合、
・人口
・年齢構成
・競合数
・将来人口
などを比較することで、それぞれの立地の特徴が見えてきます。
単一の物件の診療圏調査を見るだけでは判断が難しいことも、複数の候補を並べて比較することで、どの場所に優位性があるのかがだんだんと明確になってくるでしょう。

データは判断材料の一つに
診療圏調査レポートは、医院開業の成功確率を高めるための重要な資料です。そうではあるものの、最終的な物件選びはデータだけで決めるものではありません。
地域の雰囲気や人の流れ、将来の街の変化など、数字には表れない要素も多く存在します。
分析結果は成功できるかどうかの「答え」というわけではありませんので、判断材料の一つとして活用することが開業物件選びでは大切です。数字と現地の両方を丁寧に確認することで、より現実に即した開業戦略を立てることができるでしょう。
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